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栃木県日光市に位置する湯西川湖。その湖面にひっそりと佇む水没林は、まるで絵画のような美しさで訪れる人々を魅了します。ダム建設によって生まれた偶然の産物である水没林は、季節や時間帯によって表情を変え、訪れるたびに新たな感動を与えてくれます。
新緑がまぶしい春、紅葉が湖面を染める秋、霧が立ち込める幻想的な早朝など、それぞれの季節と時間帯が織りなす絶景は、写真愛好家にとってまさに至福のひととき。
この記事では、湯西川湖の水没林の魅力を余すところなくご紹介します。アクセス方法や撮影スポット、周辺の観光情報はもちろん、水没林が生まれた背景や、より深く楽しむための撮影のコツまで、網羅的に解説します。湯西川湖の水没林を満喫するための完全ガイドとして、ぜひご活用ください。
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水没林とは、その名の通り、普段は陸地にある樹木が、ダム湖の水位上昇などによって一時的または恒久的に水の中に沈んでしまう現象、あるいはその状態の林を指します。 木々が水中から立ち上がる様子は、非日常的で神秘的な雰囲気を醸し出し、写真愛好家や自然愛好家にとって魅力的な被写体となるのです。 湯西川湖のように、季節的な水位変動が大きいダム湖では、特定の時期にだけ現れる貴重な景観として知られています。
湯西川湖は、1983年(昭和58年)に完成した湯西川ダムによって形成された人造湖です。 このダムは治水や利水、発電を目的としていますが、春先の雪解け水が大量に流れ込むことで、ダム湖の水位が年間で大きく変動します。 特に4月下旬から6月上旬にかけては水位が最も高くなる傾向にあり、この時期に湖畔に生えているシラカンバやカラマツ、ヤナギなどの木々が根元から数十センチ、時には数メートルも水に浸かるのです。これが、湯西川湖特有の水没林の成り立ちとなります。 他の水没林スポットと比較しても、比較的水がクリアな日が多いのも特徴かもしれません。
湯西川湖の水没林の魅力は、一瞬たりとも同じではない、その変化に富んだ表情にあるでしょう。 最も美しいとされるのは、木々が一斉に芽吹き始める新緑の季節です。鮮やかな緑の葉と、エメラルドグリーンや深い青色に見える湖水とのコントラストは、まさに絶景といえます。 また、時間帯によっても雰囲気は一変します。風のない早朝、湖面が鏡のように空や木々を映し出す「逆さ水没林」は、特に写真家たちに人気があります。日中の陽光がきらめく時間帯や、夕暮れ時の柔らかい光に包まれる時間帯も、それぞれ異なる趣を感じさせてくれます。
水没林を撮影するなら、カヌーやSUPで水面に近づき、ローアングルから見上げるように撮ると、木々の雄大さと非日常感が際立ちます。水面に映るシンメトリーな構図を狙うのもおすすめです。 湖畔から撮影する場合は、少し高い場所から俯瞰気味に撮ると、水没林と湖全体の広がりを表現できるでしょう。望遠レンズがあれば、水没林の一部を切り取って、より印象的な作品作りが可能です。 個人的な経験では、偏光(PL)フィルターを使用すると、水面の反射を抑え、水中の様子や湖底の色をよりクリアに写し出すことができ、おすすめです。
水没林の印象が強い湯西川湖ですが、それ以外にも魅力はたくさんあります。 周囲を深い山々に囲まれた静寂な環境は、日常の喧騒を忘れさせてくれるでしょう。湖水の透明度が高く、水鳥たちが羽を休める姿が見られることもあります。 また、湖では釣りを楽しむことも可能です(遊漁券が必要)。周辺の自然散策や、後述する湯西川温泉と組み合わせることで、より深い満足感が得られるはずです。
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「いつ行けば、あの幻想的な水没林を見られるの?」これは最も気になるポイントの一つですよね。ここでは、ベストシーズンと見頃について詳しく解説します。
湯西川湖の水没林が最も顕著に見られるのは、例年 4月下旬から6月上旬頃 です。 これは、冬の間に積もった雪が春の訪れとともに溶け出し、大量の雪解け水がダム湖に流れ込むことで水位が急上昇するためです。この期間が、いわゆる「水没林シーズン」となります。 年によっては、梅雨時期の降水量などによって、6月後半まで見られることもありますが、基本的には春限定の景色と考えておくのが良いでしょう。夏以降は水位が下がり、水没していた木々は再び陸地に姿を現します。
数ある時期の中でも、特におすすめしたいのが 5月中旬から6月上旬 の新緑の季節です。 冬枯れていた木々が一斉に芽吹き、みずみずしい若葉が湖面に映える様子は、生命力に満ち溢れ、息をのむほどの美しさがあります。 淡い緑から濃い緑へと日々変化していくグラデーションも楽しめますし、気候的にも比較的穏やかで過ごしやすい時期であるため、カヌーなどのアクティビティにも最適です。この時期ならではの爽やかな空気感も、格別な体験となるでしょう。
水没林の景色は、その時々の水位によって大きく変化します。 水位が高い満水時に近い状態では、木の幹の大部分が水に浸かり、まるで湖から木が生えているかのような、よりダイナミックな景観が楽しめます。カヌーなどで木々の間近まで行くことも可能になるでしょう。 一方、水位が少し下がり始めると、木の根元付近や地面が見え始め、また違った表情を見せてくれます。水位が低い時期は、水没林としての見応えは減りますが、湖畔を散策しやすくなるというメリットもあります。 その年の降雪量や春先の天候によって水位の変動パターンは異なるため、「絶対」はありません。
訪問を計画する際には、必ず最新の情報を確認することをおすすめします。 湯西川ダムの水位情報は、国土交通省の「川の防災情報」ウェブサイトでリアルタイムに近いデータを確認できます。貯水位のグラフを見ることで、現在の状況や増減の傾向を把握することが可能です。 また、見頃の情報については、日光市観光協会や、カヌー体験などを提供している事業者のウェブサイト、SNSなどをチェックすると良いでしょう。現地の生の情報が発信されていることがあります。
「秋の紅葉シーズンにも水没林は見られますか?」という質問も時々受けますが、残念ながら秋(10月~11月頃)は、通常、湯西川湖の水位が年間で最も低い時期にあたるため、春のような顕著な水没林を見ることは難しい場合が多いです。 しかし、紅葉した木々が湖面に映り込む景色は、春とはまた違った美しさがあります。水位が低いため湖岸線が後退し、普段は水底にある地形が現れることも。紅葉狩りと合わせて、静かな湖畔を散策するのも趣があるかもしれません。
幻想的な水没林を、ただ眺めるだけではもったいない!ここでは、水没林をより深く、アクティブに楽しむための方法をご紹介します。
水没林を最も間近で体感できるのが、カヌーやカヤックです。 水面に近い視点から、まるで木々の間を縫うように進んでいく体験は、他では味わえません。静寂の中、パドルで水をかく音だけが響き渡り、鳥のさえずりが聞こえてくる…そんな贅沢な時間を過ごせます。 初心者向けの体験ツアーも多く開催されており、ガイドが丁寧に指導してくれるので安心です。水に濡れる可能性があるので、濡れても良い服装と着替えの準備をおすすめします。風が穏やかな午前中が、比較的湖面が安定していて漕ぎやすい傾向にあります。
近年人気が高まっているSUPも、水没林を楽しむのにおすすめのアクティビティです。 ボードの上に立ってパドルで漕ぎ進むため、カヌーとはまた違った高い視点から景色を楽しめます。湖上での自由度が高く、慣れてくればボードの上で寝転んだり、ヨガをしたりすることも。 ただし、カヌーよりもバランス感覚が求められ、風の影響を受けやすいという側面もあります。体験ツアーに参加するか、経験者と一緒に楽しむのが安全でしょう。体幹が鍛えられる感覚も、SUPならではの魅力です。
「水に入るのはちょっと不安…」「もっと手軽に楽しみたい」という方には、湯西川ダムの「ダックツアー」がおすすめです。 バスに乗ったまま陸上を走り、そのままザブンと湖へ進入!車窓から水没林の景色を眺めることができます。ガイドによるダムや周辺地域の解説も聞けるので、楽しみながら知識も深まるでしょう。 小さなお子様からご年配の方まで、幅広い層が楽しめるのが魅力です。ただし、運行期間や時間が限られている場合があるので、事前に確認が必要です。
アクティビティに参加しなくても、湖畔から水没林の美しい景色を眺めることは十分に可能です。 湯西川ダムの堤体(ダム本体)の上や、ダム管理支所周辺、湖にかかる橋の上などから、比較的アクセスしやすく、良い眺めが得られます。 特に「水辺の湯」という日帰り温泉施設の近くからは、水没林と湖を一望できるポイントがあります(※施設の利用状況や立ち入り制限にご注意ください)。ドライブの途中に立ち寄って、気軽に絶景を楽しんでみてはいかがでしょうか。
水没林への期待が高まってきたところで、次は現地へのアクセス方法を確認しましょう。車と公共交通機関、それぞれの行き方をご案内します。
都心方面から車でアクセスする場合、東北自動車道を利用するのが一般的です。 最寄りのインターチェンジは 日光宇都宮道路の「今市IC」 または 東北自動車道の「西那須野塩原IC」 となります。
湯西川ダム周辺には、ダム管理支所やダックツアー乗り場などに無料駐車場があります。ただし、シーズン中の週末などは混雑することも予想されるため、時間に余裕を持って到着することをおすすめします。山道やカーブの多い区間もあるため、運転には十分注意してください。
https://www.google.co.jp/maps
公共交通機関を利用する場合は、電車と路線バスを乗り継ぐことになります。
路線バスの本数は限られています。特に帰りのバスの時刻は必ず事前に確認し、乗り遅れないように計画を立てることが重要です。
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素晴らしい体験も、準備が不十分だと台無しになってしまうことも。ここでは、湯西川湖の水没林を楽しむための服装、持ち物、そして注意点についてまとめました。
特にカメラ機材を水上に持ち込む際は、防水対策を万全にすることをおすすめします。ストラップで体に固定するなど、落下防止策も忘れずに行いましょう。
せっかく湯西川まで来たのなら、水没林だけでなく、魅力あふれる温泉街や周辺スポットも満喫したいですよね。ここでは、おすすめの情報をいくつかご紹介します。
湯西川温泉は、壇ノ浦の戦いに敗れた平家落人が傷を癒したという伝説が残る歴史ある温泉地です。泉質はアルカリ性単純温泉で、肌に優しい「美肌の湯」としても知られています。
湯西川温泉には、歴史ある老舗旅館から、モダンな設備を備えたホテルまで、様々なタイプの宿泊施設があります。
https://www.agehanoyado.jp/
https://www.bankyu.co.jp/
https://www.takafusa.jp/
これらはほんの一例です。ご自身の予算や好みに合わせて、お気に入りの宿を見つけてみてください。予約サイトなどを活用するのも良いでしょう。
湯西川ならではのグルメも旅の楽しみの一つです。
温泉旅館の食事処でランチを提供している場合もありますので、チェックしてみると良いでしょう。
湯西川温泉エリアには、歴史や文化に触れられるスポットもあります。
少し足を延ばせば、五十里湖や川治温泉、鬼怒川温泉エリアなど、さらに見どころが広がっています。