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秩父ミューズパークで見られる雲海の最大の特徴は、市街地の明かりが雲を通して輝く雲海夜景が見られることです。多くの山岳雲海は真っ暗な中で日の出を待ちますが、ここは眼下に秩父市街が広がっているため、雲が街明かりを透過し、まるで光の海のような七色の輝きを放ちます。この都市と自然が融合した絶景こそが、多くのファンを魅了してやみません。
雲海の中に巨大な建造物が浮かぶ姿も、ミューズパークならではの見どころです。特に秩父のシンボルである斜張橋「秩父公園橋(通称:ハープ橋)」の主塔が、白い雲の中から突き出ている光景は圧巻の一言に尽きます。まるで天空に浮かぶ巨大な船のようなその姿は、フォトジェニックな一枚を狙う写真家たちにとっても格好の被写体となるでしょう。
秩父エリアには美の山公園というもう一つの名所がありますが、こちらは360度の大パノラマを楽しめる自然豊かなスポットです。対してミューズパークを選ぶメリットは、アクセスの良さと設備の充実にあります。道幅が広く運転しやすい道路が整備されているほか、展望台周辺には自動販売機やトイレも完備されているため、雲海鑑賞が初めての方や、運転に不慣れな方でも安心して訪れることができるのです。
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雲海は一年中見られるわけではなく、季節選びが勝敗を分けます。もっとも発生率が高いのは、寒暖差が激しくなる春(4月~5月)と秋(10月~11月)です。特に秋の秩父盆地は冷え込みが厳しく、ダイナミックで濃密な雲海が発生しやすい傾向にあります。まずはこのハイシーズンを狙って計画を立てるのが成功への近道と言えるでしょう。
具体的な気象条件として、以下の3要素が揃った朝を狙ってください。
特に風は重要で、いくら雲ができても強風だとすぐに流されてしまいます。無風に近い、しんと静まり返った朝こそが最大のチャンスです。
出発直前まで情報収集を怠らないことが大切です。秩父観光協会などが運営する秩父雲海カメラを確認すれば、リアルタイムで雲の状況を把握できます。また、週末探検家などのサイトが出している雲海出現予報も非常に参考になるはずです。数値が50%を超えている日は、思い切って早起きしてみる価値が十分にあります。
雲海は太陽が昇り気温が上がると、すぐに消えてしまいます。そのため、日の出時刻の少なくとも30分〜1時間前には展望台に到着しておきましょう。秋であれば午前5時〜5時半頃が目安です。夜景と雲海のコラボレーションを楽しみたい場合は、さらに早く、空が白む前の真っ暗な時間に到着する必要があります。
ミューズパークは非常に広大で、駐車場も点在しています。雲海スポットである旅立ちの丘に最も近いのはP10駐車場です。ナビには「秩父ミューズパーク P10」と設定するか、展望台の名称を入力してください。ここからであれば、展望台まで徒歩数分でアクセス可能です。他の駐車場に停めてしまうと、暗闇の中を長時間歩くことになりかねませんのでご注意ください。
残念ながら、雲海が発生する早朝の時間帯には、ミューズパークへ向かう路線バス「ぐるりん号」は運行していません。公共交通機関を利用する場合は、前日に秩父市内のホテルに宿泊し、早朝にタクシーを手配する必要があります。西武秩父駅周辺からであれば、タクシーで約15分〜20分程度です。レンタカーを利用しない場合は、事前の予約が必須となるでしょう。
雲海が発生しているということは、地上付近は濃霧に包まれているということです。ミューズパークへ向かう山道は視界が5メートル以下になることも珍しくありません。フォグランプを点灯し、スピードを十分に落として走行してください。また、晩秋や初冬は路面凍結のリスクもあるため、スタッドレスタイヤの装着も検討すべきです。
P10駐車場から旅立ちの丘までは舗装された遊歩道が続いており、スニーカーでも問題なく歩けます。展望デッキは広く、手すりもしっかりしていますが、早朝は夜露や結露で床が濡れて滑りやすくなっていることが多々あります。足元には十分注意し、転倒しないよう慎重に移動してください。
最近のスマートフォンならナイトモードを使用すれば十分に美しい写真が撮れます。一眼レフやミラーレスを使用する場合のポイントは以下の通りです。
雲海のハイシーズンである11月の週末ともなると、展望デッキ最前列は午前4時台からカメラマンで埋め尽くされます。良い場所で撮影したいなら、かなりの早起きが必要です。ただし、後ろからでも十分に景色は見えますので、無理な割り込みは避けましょう。また、三脚の足が他の人の邪魔にならないよう配慮するなど、譲り合いの精神を持つことが大切です。
たかが秋と侮っていると、寒さで景色どころではなくなってしまいます。放射冷却が起きる朝は、氷点下近くまで気温が下がることも珍しくありません。ダウンジャケット、手袋、ニット帽、そして首元を温めるマフラーは必須アイテムです。足元からの冷えも厳しいため、厚手の靴下やカイロも用意しておくことを強く推奨します。
駐車場から展望台までの道には街灯がありますが、場所によっては薄暗いところもあります。スマートフォンのライトでも代用可能ですが、足元をしっかり照らせる小型の懐中電灯やヘッドライトがあると安心です。また、長時間待機することになるため、保温ボトルに入れた温かい飲み物があると、心身ともに温まり、贅沢な待ち時間を過ごせるでしょう。
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早朝6時〜7時頃に雲海を見終えた後、困るのが朝食場所です。ミューズパーク内のカフェはまだ開いていません。おすすめは、車で10分ほど下った国道140号線沿いにあるファミリーレストランやファストフード店です。また、少し足を伸ばして西武秩父駅前温泉 祭の湯のフードコート(※営業時間は要確認)や、朝から営業している喫茶店を事前にリサーチしておくと、スムーズに一日をスタートできます。
もし秋(10月下旬〜11月上旬)に訪れたなら、そのまま帰るのはもったいないと言えます。ミューズパーク名物のイチョウ並木(スカイロード)が見頃を迎えているからです。約3kmにわたって続く黄金色のトンネルは圧巻で、早朝であれば人も少なく、朝日を浴びて輝くイチョウを独り占めできるかもしれません。
冷え切った体を温めるなら、日帰り温泉への立ち寄りが最適です。武甲温泉や星音の湯など、秩父エリアには良質な温泉施設が多数あります。また、パワースポットとして名高い秩父神社や三峯神社へ早朝参拝に向かうのも良いでしょう。朝の澄んだ空気の中での参拝は、雲海に負けないくらい清々しい体験となるはずです。
秩父ミューズパークの雲海は、条件さえ揃えば誰でも見ることができる身近な絶景です。しかし、その感動を味わうためには、気象条件の確認や防寒対策など、事前の準備が欠かせません。今回ご紹介したポイントを押さえ、万全の状態で挑んでみてください。眼下に広がる白銀の世界と輝く街明かりを見た瞬間、早起きの疲れなど一瞬で吹き飛んでしまうことでしょう。